igglepiggleのロンドン備忘録

MBA留学中に感じたことをつらつらと

比較優位と家事分担

1年目の授業が終了した。時間ができたので振り返りも兼ねて更新していきたいと思う。

こちらに来てから僕に時間ができたこと、子供ができて家事&子育ての負担が増大したことなどから、日本にいる時に比べて随分家事に参画するようになった。
僕の分担は自然と、皿洗い、ゴミ捨て、洗濯物畳み、子供をお風呂に入れるになったのだが、先学期のCorporate StrategyでComparative Advantage(比較優位)を学んで大変しっくりきた。

比較優位とは、wikipediaでは小難しく書かれているけれど、端的に言うと、
「自分が他人より絶対的に得意でなくても、自分の中で相対的に得意なものに注力すると全体最適になる」ということ。

授業の例で言うと、自動車と小麦両方100の効率で作れるアメリカと、自動車は40、小麦は60の効率で作れるメキシコの2国があった場合、両方共絶対的効率ではアメリカの方が有利だが、アメリカは自動車の生産に注力し、メキシコは「比較優位」である小麦の生産に注力し、貿易を行った方が両国にとって有益になるということ。

家事の例で言えば、僕が妻よりも絶対的に得意なことは殆どないけれど、料理や掃除などは僕と妻の質/効率の差が大きく、皿洗いやゴミ捨ては差が小さいので、後者を僕が担当するのが家庭にとって全体最適ということ。


では、旧来型の日本の家庭の姿である、「夫は仕事ばかりで家事は全くせず、妻は専業主婦」というのは比較優位の極みであり最も理にかなっているのだろうか?
答えは、以前はそうだったかもしれないが今は違う(場合が多い)ということだと思う。主な要因は以下の3つ(コンサル風に)
  1. 「専業」であることの優位の減少
    • 家電の進歩や、利用可能な外部サービスの増加によって、専業になることによるメリットが以前より小さい。極端な例で言うと、川で洗濯をするのには素人と専業で天と地ほどの差がでるが、洗濯機を回す分には誰がやっても殆ど一緒。掃除もルンバを利用できる、ゴミもマンションなら曜日管理を考えず毎日24時間捨てられるなど、随分と素人にも易しくなっていると思う
  2. 女性側のオプションの増大
    • 以前は女性が家庭外で活躍の場を見つけるのが難しく、それ故女性が家事を行うことの機会損失が少なかった。まだ男女の機会均等が完全だとは思わないが、20年前、30年前に比べればかなり改善してきているのではないか
  3. 非経済的なデメリットの増大
    • 上記変化に伴ってということかもしれないが、お金を稼いでくれば良い夫という時代ではなくなった。家事にも子育てにも非協力的な夫は家庭内でも社会的にも信頼を得ることが難しくなっているのではないか。もちろんこの部分は定性的なので、個々人がどれだけ重視するかに依るけれど、少なくとも私個人としては妻と信頼関係を築くことや、子供と一緒の時間を過ごすことは大きな意味を持つ
というわけで、帰国して仕事が忙しくなっても出来る限り家事・育児に参画していこうと思う。上のモデルでは捉えきれてないけれど、実際の運用にあたっては、習慣とか意識の問題が大きいから、この時間があるときに意識を変えることができて幸運だったと思う。


ついでに、比較優位はキャリアを考える上でも使える。
就活やキャリアの岐路ではついつい、「自分は何が得意なんだろう」「これについてはあの人の方ができるしな・・・」などという考えに陥ることがあるけれど、絶対的に他人より得意なものでなくても自分が比較優位を持っている(と思える)ことを頑張れば自分にとっても社会にとっても最適だと思えば少しは気が楽になるかもしれない。そして自分が好きだと思えるけれど比較優位でないことなんて殆どないのだから、好きかどうかを重視すれば良いと思う。